人形豆知識|端午の節句と鯉のぼり
端午の節句と言えば、五月人形だけでなく、「鯉のぼり」も欠かせません。
ここでは、鯉のぼりの由来と豆知識をお届けいたします。
鯉のぼりの由来
鯉のぼりをたて、武者人形を飾る習慣は江戸時代になってからで、日本独特のものです。
鯉のぼりはもともと、武家出陣の際に用いる幟旗(のぼりばた)でした。出陣の他、男の子が生まれるとこれを立て、その誕生を祝うようになりました。庶民に幟旗は許されていなかったので、代わりに鯉のぼりが登場したのです。
また、中国故事では、黄河を上って急流を登り切った鯉は竜になるとされ、出世魚として縁起の良いものです。子供に鯉の滝登りのように力強く、そして立派になって欲しいという願いが込められているのです。
鯉の上にある、吹流しとは何?
鯉の上にある「吹流し」ですが、「鯉は分かるけど、あのヒラヒラしているのは何?」と思う 方も多いのではないでしょうか。その「吹流し」の豆知識をお届けいたします。
仏事を連想させるので、白と黒を置き換えているものも多いですが、吹流しは、青・赤・黄・白・黒の五色がもともとの形でした。
この五色は、古来中国から伝わった「陰陽五行説」に由来します。
「陰陽五行説」では、自然の道理を下のように五つに分けて考えています。この五行が循環することで、宇宙の法則と安定が保たれる、森羅万象の全てを表す節理とされています。
五行 | 色 | 季節 | 方角 | 十二支 |
---|---|---|---|---|
木 | 青 | 春 | 東 | 卯、寅 |
火 | 赤 | 夏 | 南 | 午、巳 |
土 | 黄 | 土用 | 中央 | 辰、戊、丑、未 |
金 | 白 | 秋 | 西 | 酉、申 |
水 | 黒 | 冬 | 北 | 子、亥 |
さて、端午の「端」は「端っこ」、すなわち「最初」の意味です。「午」は「午(うま)の日」、つまり五月最初の午の日に行われる行事ということです。節分などに代表されるよう、こういった「端っこ」や「節目」には、春夏秋冬各季節の力が弱まり、鬼門が開いて邪気が入り込みやすいとされていました。
また五月は「物忌みの五月」と言われ、五月病なんて言葉もあるくらい、心身の調子を崩しやすい時期です。そこで森羅万象全てを表す五行の吹流しを天に掲げ、安定した強い力をもって子供の健康を祈ったのです。
ちなみに、この五行に陰陽の月と日を加えたものが一週間です。ちょっと探せば、今でもあちこちで五行が発見できそうですね。
父・母・子鯉の意味とは?
一般にお父さん鯉は「黒」、お母さんは「赤」、子供は「青」。
これも五行に当てはめてみると、なるほどと思わされます。
「黒」は冬や水を表します。
水は命になくてはならない、生命の源。厳しくどっしりと構える冬は、まさに「父」のイメージです。
「赤」は火や夏を象徴しています。
夏は全ての生き物を一番活発に生い茂らせ育てる季節。「母」の象徴にぴったりです。
「青」は木や春。
この時期にあらゆる植物が芽吹き、生物は活発に動き始め、木々は伸びやかに育っていきます。確かに、生命の始まりを表す青は「子」のイメージといった感じです。